情報倫理・情報公開法の総まとめ|8キーワードを過去問と具体例で学ぶ【ITパスポート】

地震の直後、「動物園からライオンが放たれた」という写真付きの投稿がSNSで拡散し、投稿した人が逮捕される——2016年の熊本地震で実際に起きた出来事です。ITパスポート試験では、こうした情報との付き合い方に関するキーワードが、近年のシラバス改訂で相次いで追加されています。この記事では「情報倫理・情報公開法」の8つのキーワードを、実話と過去問で整理し、試験で迷わない区別のしかたまで解説します。
この記事で学べるキーワード
| 分類 | キーワード | ひとこと |
|---|---|---|
| 情報倫理 | フェイクニュース | 虚偽情報の拡散 |
| ディスインフォメーション | 虚偽×害意あり | |
| ミスインフォメーション | 虚偽×害意なし | |
| マルインフォメーション | 事実×害意あり | |
| エコーチェンバー★ | 人の集まりで意見が増幅 | |
| フィルターバブル★ | アルゴリズムで情報が偏る | |
| デジタルタトゥー★ | ネットの情報は消せない | |
| 行政機関への情報開示請求 | 情報公開法 | 行政文書の開示請求 |
★はシラバスVer.6.2で追加された比較的新しいキーワードです。なおディスインフォメーション・ミスインフォメーション・マルインフォメーションの3語は、ITパスポートのシラバスには単独掲載がありません。姉妹試験(情報セキュリティマネジメント試験)のシラバスに掲載されている用語です。
フェイクニュースを理解するうえで欠かせないため、この記事でまとめて解説します。まずは表で全体像をながめてみてください。
情報倫理
フェイクニュース
冒頭のライオンの投稿は、実は南アフリカの路上で映画撮影のために撮られた写真でした。それでも投稿は1時間で2万件以上リツイートされ、動物園には100件を超える問い合わせが殺到しました。投稿者は、うその情報で業務を妨害した「偽計業務妨害」の疑いで逮捕されています(のちに不起訴)。
フェイクニュースとは、このように事実に基づかない虚偽の情報が、あたかもニュースのように拡散される現象のことです。
うそは、どれくらいの速さで広まるのでしょうか。米MITの研究チームが、Twitter上の約12万6,000件のニュースの広がりを分析した研究があります(2018年・科学誌Science)。本当のニュースが1,500人に届くまでには、うそのニュースの約6倍の時間がかかっていました。つまり、うそのほうが圧倒的に速いのです。
試験対策としては、フェイクニュースを含む「問題のある情報」を、「情報の真偽」と「害意の有無」の2つの軸で分類できることを覚えておくと整理が楽になります。この分類から、次の3つのキーワードが生まれます。
ディスインフォメーション・ミスインフォメーション・マルインフォメーション
3つとも名前が似ていますが、「真偽×害意」の組み合わせで整理すると簡単に区別できます。
| 用語 | 真偽×害意 | 例 |
|---|---|---|
| ディスインフォメーション | 虚偽×害意あり | 意図的に作られたデマ・プロパガンダ |
| ミスインフォメーション | 虚偽×害意なし | 誤解や勘違いが善意で広まる |
| マルインフォメーション | 事実×害意あり | 事実を加害目的で晒す(プライバシー暴露) |
英語の頭文字が記憶フックになります。ミスは「ミステイク(間違い)」のミス、マルは「マルウェア」のマルと同じ悪意です。残るディスが「意図的なうそ」と覚えましょう。
ライオンのデマに当てはめると、うそと知って投稿した人はディスインフォメーションの発信者、本当だと信じて拡散した人たちはミスインフォメーションの担い手です。悪意の人はひとりでも、善意の拡散で被害が広がる——ここがフェイクニュースの厄介なところです。
こうした情報への対抗手段がファクトチェック、つまり情報の正確性を検証する取り組みです。3類型とセットで覚えると、この分野はまとめて得点源になります。
試験でのポイント: 「虚偽か事実か」「害意があるかないか」の組み合わせで判別する。
エコーチェンバーとフィルターバブル
どちらも、SNS時代に情報との接し方が偏ってしまう現象です。エコーチェンバーとは、同じ意見の人が集まり、似た情報を繰り返し受け取ることで意見が反響・強化される現象です。一方のフィルターバブルとは、アルゴリズム(利用者に合わせて表示を自動で決める仕組み)が好みに合う情報だけを表示し、それ以外が見えなくなる現象を指します。
ちなみにエコーチェンバー(echo chamber)はもともと、音楽の録音などで残響(エコー)を得るために使う「残響室」のことです。閉じた部屋で自分の声が反響し続ける様子から、この名前が付きました。
| 観点 | エコーチェンバー | フィルターバブル |
|---|---|---|
| 偏りの原因 | 人の集まり(社会的要因) | アルゴリズム(技術的要因) |
| 起きる場面 | SNSのコミュニティ | 検索結果・おすすめ表示 |
動画サイトのおすすめが同じジャンルばかりになるのはフィルターバブル、同じ考えのグループ内で極端な意見が「当たり前」になっていくのはエコーチェンバーです。覚え方は、泡(バブル)に包むのは機械、部屋(チェンバー)に集まるのは人です。フィルターバブルは別記事でさらに詳しく解説しています。
デジタルタトゥー
デジタルタトゥーとは、一度インターネットに公開された情報は、削除しても完全には消えないことを入れ墨(タトゥー)に例えた表現です。
なぜ消えないのでしょうか。他の人のスクリーンショットで保存されたり、検索エンジンにキャッシュとして残ったり、拡散されたコピーまでは追跡できないためです。学生時代の投稿が就職活動で問題になる、といったケースが典型例です。
試験でのポイント: 技術的に消す方法ではなく、「削除しても消えない」という性質そのものが問われる。投稿する前の判断が本質です。
行政機関への情報開示請求
情報公開法
ここからは法律のキーワードです。情報公開法の正式名称は「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」です。過去問では次のように表現されています。
行政機関の保有する資料について、開示を請求する権利とその手続などについて定めた法律
(出典:ITパスポート試験 令和元年秋期 問6)
たとえば市民が「自分の住む地域の公共事業の計画書を見たい」と思ったとき、行政機関に開示を請求できます。条文の第3条には「何人も…開示を請求することができる」とあり、「なんぴと」と読みます。国籍や年齢の制限はなく、手数料は開示請求1件につき300円(オンラインなら200円)です。思ったより身近な制度ではないでしょうか。
注意したいのは、対象が行政機関だけという点です。三権分立の「立法・行政・司法」のうち、国会(立法)や裁判所(司法)の文書は対象外です。民間企業も対象外で、上場企業の情報開示はディスクロージャという別の仕組みになります。
試験でのポイント: 「情報公開法」と聞いたら「行政」だけを連想する。
あわせて押さえたい関連用語
メインの8個のほかに、シラバスの情報倫理には次の関連用語も登録されています。余裕があれば目を通してみてください。
| 用語 | ひとこと |
|---|---|
| ファクトチェック | 情報の正確性を検証する取り組み。フェイクニュース対策の中核 |
| ネチケット | インターネット上でのエチケット。相手の顔が見えなくても礼儀を守る |
| ソーシャルメディアポリシー | 企業がSNS利用のルールを定めたガイドライン。私的利用も対象 |
| チェーンメール | 不特定多数への転送を求めるメール。受け取っても転送しない |
| ヘイトスピーチ | 人種・民族・性別などを理由とする差別的な言動 |
| ELSI(エルシー、Ethical, Legal and Social Issues) | 新技術の倫理的・法的・社会的な課題を統合的に検討する考え方 |
| 情報流通プラットフォーム対処法 | 大規模なSNS事業者などに権利侵害情報の削除迅速化を求める法律(旧称: プロバイダ責任制限法) |
| フィルタリング/ペアレンタルコントロール | 有害サイトの遮断(サイト単位)/子どもの利用全般の管理 |
過去問に挑戦
それでは、実際の過去問を1問解いてみましょう。ここまでの内容が頭に入っていれば、自信をもって選べるはずです。
腕試し問題
出典:ITパスポート試験 令和4年度 問13
情報公開法に基づいて公開請求することができる文書として、適切なものはどれか。
解答と解説
正解はエです。
正答の理由
情報公開法の対象は、行政機関が作成・保有する行政文書です。総務省は中央省庁、つまり行政機関なので、エが正解になります。
誤答の解説
- ❌ ア「立法機関の立法文書」→ 国会は行政機関ではありません。三権分立を思い出してください
- ❌ イ「司法機関の司法文書」→ 裁判所も行政機関ではないため対象外です
- ❌ ウ「上場企業の社内文書」→ 民間企業は対象外です。企業が投資家などに向けて自主的に情報を開示する仕組みはディスクロージャと呼ばれ、情報公開法とはまったく別の制度です
ポイント
- 情報公開法=「行政」だけ(立法・司法・民間は対象外)
- 企業の情報開示(ディスクロージャ)と混同しない
- 「情報公開法」という名前から「なんでも公開請求できる」と誤解しない
まとめ
| キーワード | 一行まとめ |
|---|---|
| フェイクニュース | 虚偽の情報がニュースのように拡散される現象 |
| ディスインフォメーション | 虚偽×害意あり。意図的なデマ |
| ミスインフォメーション | 虚偽×害意なし。善意で広まる誤情報 |
| マルインフォメーション | 事実×害意あり。事実を加害目的で晒す |
| エコーチェンバー | 人の集まりが原因で意見が増幅 |
| フィルターバブル | アルゴリズムが原因で情報が偏る |
| デジタルタトゥー | 一度公開した情報は完全には消せない |
| 情報公開法 | 行政機関の文書だけが開示請求の対象 |
キーワードの多いテーマですが、「真偽×害意」「人かアルゴリズムか」「行政だけ」の3つの軸で整理すれば怖くありません。もし「ライオンが放たれた」級の投稿を見かけたら、拡散する前にファクトチェック——それが今回のテーマのいちばんの実践です。試験の直前にもまとめの表を見返して、区別のしかたを定着させておきましょう。


