企業の組織形態とIT利活用の総まとめ|8キーワードを過去問と具体例で学ぶ【ITパスポート】

会社の組織図を思い浮かべてみてください。社長がいて、その下に部署が枝分かれしていく、あの図です。実はあの枝分かれのしかたには名前がついていて、ITパスポート試験では「事業部制組織」「職能別組織」といった形でくり返し問われます。似た言葉が並ぶので混乱しやすい分野ですが、コツをつかめば得点源です。この記事では「企業の組織形態とIT利活用」の8つのキーワードを、過去問と具体例で一気に整理します。
この記事で学べるキーワード
| 分類 | キーワード | ひとこと |
|---|---|---|
| 経営組織 | 事業部制組織 | 事業ごとに分けて独立採算 |
| 職能別組織 | 仕事の種類ごとに分ける | |
| マトリックス組織 | 事業軸と職能軸のかけ合わせ | |
| 役職 | CEO | 最高経営責任者 |
| CIO | 最高情報責任者 | |
| 社会におけるIT利活用の動向 | 第4次産業革命 | AI・IoTが起こす産業の変化 |
| Society 5.0 | 日本が掲げる未来社会の姿 | |
| DX | デジタルによるビジネスの変革 |
前半の組織形態がこの回のヤマです。まずは表で全体像をながめてから、1つずつ見ていきましょう。
経営組織
事業部制組織
家電も自動車も食品も手がける大きな会社を想像してみてください。全部をひとまとめに管理するのは大変なので、「家電事業部」「自動車事業部」のように事業ごとに組織を分けるのが自然です。これが事業部制組織です。
事業部制組織の定義は、過去問で次のように表現されています。
利益責任と業務遂行に必要な職能を、製品別、顧客別又は地域別にもつことによって、自己完結的な経営活動が展開できる組織である。
(出典:ITパスポート試験 平成25年春期 問22)
少しかたい言い回しですが、ポイントは「自己完結的」という部分です。それぞれの事業部が、開発・生産・販売といった機能を自分の中に一通りそろえて、まるで小さな会社のように動きます。だから利益の責任もその事業部が負います。
事業部制のよいところは、事業ごとの専門性が高まり、その事業部だけで判断できるので意思決定が速いことです。製品に問題が起きたときも、担当する事業部が責任を負うので、責任の所在がはっきりします。一方で弱点もあります。事業部どうしの交流が減ってしまったり、同じような機械を各事業部が別々に持ってしまい、むだが生まれたりすることです。
ポイント: 事業部制組織は「事業ごとに分けて、独立採算で回す」組織です。
職能別組織
事業部制が「事業ごと」に分けるのに対して、職能別組織は「仕事の種類ごと」に分けます。営業部・製造部・経理部のように、同じ役割の人を1つの部署にまとめる、いちばんイメージしやすい形です。機能別組織とも呼ばれますが、同じものを指します。
過去問での定義は次のとおりです。
業務を専門的な機能に分け、各機能を単位として構成する組織
(出典:ITパスポート試験 平成27年春期 問26)
同じ仕事の人が集まるので、その分野のノウハウがたまり、専門性が高まります。組織全体を上から統制しやすいのも強みです。
ただし弱点は、責任の所在があいまいになりがちなことです。たとえば製品にクレームが来たとき、「そんな製品を作った製造部が悪い」「いや、説明した営業部が悪い」と、部署どうしで責任を押しつけ合いになりやすいのです。事業部制なら「その事業部の責任」と一言で決まる場面でも、職能別だとそうはいきません。ここが2つの組織のいちばん大きな違いといえるのではないでしょうか。
ポイント: 職能別組織は「仕事の種類ごとに分ける」組織で、専門性は高いが責任の所在があいまいになりがちです。
マトリックス組織
事業部制と職能別、どちらにも長所と短所があります。それなら「いいとこ取り」をしたい、と考えて生まれたのがマトリックス組織です。過去問では次のように問われました。
2人又はそれ以上の上司から指揮命令を受けるが、プロジェクトの目的別管理と職能部門の職能的責任との調和を図る組織構造はどれか。
(出典:ITパスポート試験 平成21年秋期 問9・正解=マトリックス組織)
かんたんにいうと、1人の社員が「事業を軸にした部署」と「仕事の種類を軸にした部署」の両方に同時に所属する形です。表にすると、たての列と横の行が交わるマス目(マトリックス)のように見えるので、この名前がついています。
いいとこ取りができる一方で、大きな弱点があります。上司が2人いるという状態です。事業部の上司と職能部の上司からまったく違う指示が来たら、板ばさみになって困ってしまいますよね。経営の世界には「命令一元化の原則」といって、1人の部下は1人の上司から命令を受けるべきだ、という古くからの考え方があるほどです。マトリックス組織を選ぶなら、この弱点への対策が欠かせません。
ポイント: 3つの組織形態は「事業ごと(事業部制)/仕事ごと(職能別)/かけ合わせ(マトリックス)」で覚えましょう。
役職
CEOとCIO
ここからは役職です。ITパスポート試験では、会長・社長・専務といった日本式の呼び方ではなく、アメリカ式のアルファベットの役職名が問われます。覚えるべきはたった2つ、CEOとCIOです。
CEO(シーイーオー、Chief Executive Officer)は最高経営責任者のことで、企業の経営でもっとも強い責任と権限を持つ役職です。日本では社長や会長が兼ねていることも多く、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
CIO(シーアイオー、Chief Information Officer)は最高情報責任者のことで、経営幹部のうち情報システムを統括する最高責任者です。名前に Information(情報)が入っている点が手がかりになります。情報システムをつかさどる役職だ、と結びつけて覚えておきましょう。
ほかにも COO・CFO・CTO などの役職がありますが、まずはこの2つを押さえれば十分です。
ポイント: 「E=Executive(経営)でトップ」「I=Information(情報)の責任者」と頭文字で区別しましょう。
社会におけるIT利活用の動向
第4次産業革命
ここからは、社会全体でITがどう使われているかを表す用語です。まずは第4次産業革命から見ていきましょう。
産業革命というと、歴史の授業で習った蒸気機関を思い出すかもしれません。あれが第1次で、その後は電力による大量生産(第2次)、コンピュータによる自動化(第3次)と続いてきました。そして今、AIやIoT、ビッグデータといったデジタル技術が起こしつつある大きな変化が第4次産業革命です。
じつはこの「第4次産業革命」という言葉、2016年のダボス会議(世界経済フォーラムの年次総会)で主要テーマとして掲げられ、一気に広まったものです。提唱したのは、この会議の創設者であるクラウス・シュワブ氏でした。雑談のネタにもなりそうな豆知識です。
ポイント: 第1次=蒸気、第2次=電力・大量生産、第3次=コンピュータ、第4次=AI・IoT・ビッグデータ、と順番で覚えましょう。
Society 5.0
Society 5.0(ソサエティ5.0)は、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させた社会を指します。そのうえで、経済発展と社会的課題の解決を両立する「人間中心の社会」だとされています。
こちらも歴史をたどると覚えやすくなります。人類は、狩猟社会(Society 1.0)から農耕社会(2.0)、工業社会(3.0)、情報社会(4.0)と歩んできました。その次に来る第5の社会、という意味です。
第4次産業革命との違いがまぎらわしいのですが、Society 5.0 は日本が提唱した社会像だという点がポイントです。2016年(平成28年)にスタートした国の「第5期科学技術基本計画」で初めて掲げられました。日本発のキーワードだと覚えておくと、試験でも迷いにくくなります。
ポイント: Society 5.0=日本発の「人間中心の社会」。第4次産業革命は世界的な産業の変化、Society 5.0は日本が描く社会の姿、と発信元で区別しましょう。
DX(デジタルトランスフォーメーション)
DX(ディーエックス、Digital Transformation)は、多くの方が耳にしたことのある言葉ではないでしょうか。企業がAI・IoT・ビッグデータなどのデジタル技術を使って、業務を効率化するだけでなく、製品やサービス、ビジネスモデルそのものを変革することを指します。さらに組織や企業文化まで変えて、競争上の優位性を確立するところまでを含む言葉です。
ここで大事なのは、DXは「単なる業務効率化」ではないという点です。紙の書類をデータ化しただけ、ではDXとはいえません。ビジネスのやり方そのものを「変革」するところがポイントです。
わかりやすい例が、レジのない無人コンビニです。天井や棚に取り付けた多数のカメラとセンサーで「だれがどの商品を手に取ったか」を追いかけ、店を出ると自動で決済される。「人が棚に並べ、人がレジを打つ」という当たり前だったやり方を根本から変えています。これこそがDXのイメージです。
ポイント: DXは「効率化」ではなく「変革」。ビジネスモデルや組織文化まで変わっているかが見分ける鍵です。
過去問に挑戦
それでは、実際の過去問を1問解いてみましょう。役職のCIOが、まぎらわしい他の役職とまとめて問われる良問です。
腕試し問題
出典:ITパスポート試験 平成23年秋期 問2
CIOの役割として、最も適切なものはどれか。
解答と解説
正解はイです。
正答の理由
CIO(最高情報責任者)は、経営幹部のうち情報システムを統括する役職でした。だからその役割は、経営戦略に沿って「情報戦略」を立案し、実施を引っぱっていくことになります。イの記述がまさにこの内容です。名前にInformation(情報)が入っている、という手がかりを思い出しましょう。
誤答の解説
- ❌ ア「客観的な立場から業務やITの統制を監査する」→ これは情報システム監査人(内部監査人)の役割です。監査する人と統括する人は別の立場です
- ❌ ウ「人事制度を構築し管理・運営全般を掌握する」→ これは人事や総務を担う役職の役割で、情報システムの統括とは別ものです
- ❌ エ「資金効率の向上や財務会計の正確性を維持する」→ これはお金を扱うCFO(最高財務責任者)の役割です。Finance(財務)のFが手がかりになります
ポイント
- CIOの「I」はInformation。情報戦略を主導するのが仕事
- 似た役職と混同しないように。CFO=財務、監査人=チェック役
- 「経営戦略を実現するための◯◯戦略」の◯◯が「情報」ならCIOと結びつける
まとめ
| キーワード | 一行まとめ |
|---|---|
| 事業部制組織 | 事業ごとに分け、自己完結・独立採算で回す |
| 職能別組織 | 仕事の種類ごとに分ける。専門性は高いが責任があいまい |
| マトリックス組織 | 事業軸と職能軸のかけ合わせ。上司が2人になる弱点 |
| CEO | 最高経営責任者。経営のトップ |
| CIO | 最高情報責任者。情報システムの統括 |
| 第4次産業革命 | AI・IoTが起こす世界的な産業の変化 |
| Society 5.0 | 日本が掲げる人間中心の未来社会 |
| DX | デジタルで効率化を超えた「変革」を行うこと |
キーワードは多めですが、前半の組織形態は「事業ごと/仕事ごと/かけ合わせ」の3つで整理でき、後半は歴史の順番や発信元で区別できます。組織形態は過去問でくり返し問われる定番テーマなので、まとめの表で定義を1対1に結びつけて、試験本番でも迷わず選べるようにしておきましょう。
