財務諸表・財務分析の総まとめ|7キーワードを過去問と具体例で学ぶ【ITパスポート】

会社の「成績表」と「財産の一覧」、この2つの違いを説明できるでしょうか。ニュースで「決算」という言葉を耳にしても、貸借対照表や損益計算書と言われるととたんに難しく感じてしまう方も多いのではないでしょうか。この記事では、財務諸表・財務分析の7つのキーワードを、身近な例と過去問で整理します。名前は堅苦しくても、中身は「会社のお金がどうなっているか」を見るための道具にすぎません。
この記事で学べるキーワード
| 分類 | キーワード | ひとこと |
|---|---|---|
| 財務三表 | 貸借対照表 | ある時点の財産の一覧 |
| 損益計算書 | 一定期間の成績表 | |
| キャッシュフロー計算書 | 現金の出入りの記録 | |
| 財務指標 | ROI | 投資したお金の稼ぎ効率 |
| ROE | 会社全体の稼ぎ効率 | |
| 流動比率 | 短期の支払い能力 | |
| 総資産回転率 | 資産を使いこなす効率 |
このテーマはITパスポート試験のなかでは出題数が多くありません。ただ、社会人になれば必ず耳にする言葉ばかりです。まずは「そういう表・指標があるんだな」と全体像をつかむことを目標にしましょう。
財務三表
会社のお金の状態は、大きく3枚の表で表します。これらをまとめて財務諸表と呼びます。3枚それぞれが「いつの」「何を」見る表なのかを押さえると、区別がぐっと楽になります。
貸借対照表
たとえば引っ越しのとき、部屋にある家具や貯金を書き出して「今の自分の財産」を一覧にするとします。貸借対照表は、これを会社版にしたものです。ある時点で会社が何をどれだけ持っているかを一枚にまとめます。
貸借対照表を説明した選択肢が、過去問で次のように出題されています。
決算日における会社の財務状態を資産・負債・純資産の区分で表示したもの
(出典:ITパスポート試験 平成31年春期 問18)
簡単にいうと、決算日という「ある一瞬」の財産の状態を切り取った表ということです。左側に資産(持っているもの)、右側に負債(返すべき借金)と純資産(返さなくてよい元手)を並べます。
おもしろいのは、この表が必ず左右で釣り合う点です。持っているもの(資産)は、借りたお金(負債)か自前のお金(純資産)のどちらかで手に入れたはずだからです。この「資産=負債+純資産」がいつも成り立つことから、英語では釣り合いを意味するバランスシート(Balance Sheet、B/S)と呼ばれます。
試験でのポイント: 「決算日」「ある時点」という言葉が出たら貸借対照表を思い出す。
損益計算書
貸借対照表が「今の財産」を写した写真だとすると、損益計算書は「一年間でどれだけ稼いだか」を記録した成績表です。学校の通知表が1学期の成績をまとめるように、会社の一定期間の売上や利益をまとめます。
過去問では、損益計算書の説明が次のように表現されています。
一定期間に発生した収益と費用によって会社の経営成績を表示したもの
(出典:ITパスポート試験 平成31年春期 問18)
つまり、どれだけ売って(収益)、どれだけ使って(費用)、結果いくら残ったか(利益)を示す表です。英語ではProfit and Loss statement、略してP/Lと呼ばれます。
貸借対照表との違いは、見ている「時間」です。貸借対照表はある一瞬の状態、損益計算書は一定期間の動きを表します。写真と動画の関係だと考えるとイメージしやすいかもしれません。
試験でのポイント: 「一定期間」「経営成績」「収益と費用」が出たら損益計算書。
キャッシュフロー計算書
「利益が出ているのに会社が倒れる」——そんなことが実際に起こります。これを防ぐために見るのがキャッシュフロー計算書です。一会計期間のあいだに、現金がどれだけ入って、どれだけ出ていったかを記録します。
なぜ利益だけでは危ないのでしょうか。会社どうしの取引では、代金の支払いは翌月末などの後払いが一般的です。ここで、1億円の建物は持っているのに現金は一円もない、という状況を想像してみてください。建物はすぐには売れませんから、財産はあるのに支払いができない、という事態になります。
キャッシュフロー計算書は、こうした「手元の現金」に注目して、会社に支払いを行うだけの余力があるかを確認する表です。利益が黒字でも現金が尽きて倒産することを「黒字倒産」と呼びます。
試験でのポイント: 利益の話ではなく「現金の出入り」を見る表だと覚える。
財務指標
3枚の表の数字を使うと、会社の状態を測るさまざまな指標が計算できます。ここからは試験にも出やすい4つの指標を紹介します。似た名前が並びますが、「何と何を比べているか」を意識すると混乱しません。
ROIとROE
ROI(アールオーアイ、Return on Investment)とROE(アールオーイー、Return on Equity)は、名前も役割も似ています。そのため混同されがちな指標です。どちらも「投じたお金に対してどれだけ稼げたか」という効率を表します。
まずROIは、投下した資本に対しての収益性を測る指標で、投資利益率とも呼ばれます。ある事業に100万円を投じて20万円の利益が出れば、ROIは20%です。特定の事業がどれだけ効率よく稼いでいるかを見るときに使います。
一方のROEは、株主が出したお金(株主資本)に対して、どれだけの利益を上げたかを示す指標で、株主資本利益率とも呼ばれます。こちらは会社全体の稼ぐ力を見る、より総合的な指標です。
2つの違いは、英語の頭文字にそのまま表れています。ROIの「I」はInvestment(投資)、ROEの「E」はEquity(株主資本)です。つまりROIは個別の事業、ROEは会社全体がスコープになります。3文字の略語で丸暗記するより、英語の意味で覚えたほうが忘れにくいかもしれません。
試験でのポイント: I=Investment(個別の投資)、E=Equity(会社全体の元手)で区別する。
流動比率
会社が近いうちに支払うお金を、ちゃんと払えるかどうか——この短期的な支払い能力を測るのが流動比率です。1年以内に支払う予定の負債(流動負債)を、1年以内に現金化できる資産(流動資産)でどれだけまかなえるかを見ます。
計算式はシンプルで、次のとおりです。
流動比率(%)= 流動資産 ÷ 流動負債 × 100
この数値が100%なら、すぐ入ってくるお金とすぐ出ていくお金がちょうど同額という状態です。ただし、お金が出入りするタイミングによっては一瞬だけ足りなくなるかもしれません。そのため、一般的には200%以上が理想的とされています。
先ほどのキャッシュフロー計算書と目的が似ていますが、流動比率はそれを1つの数値でパッと示せるのが便利なところです。
試験でのポイント: 「短期の支払い能力」「流動資産 ÷ 流動負債」がキーワード。
総資産回転率
最後は総資産回転率です。これは、会社の総資産が1年に何回「売上」という形で回転したかを示す指標です。仕入れた商品を売ってお金を回収し、また仕入れる——この一連の流れを何回まわせたか、と考えるとイメージしやすいでしょう。
計算式は次のとおりです。
総資産回転率(回)= 売上高 ÷ 総資産
この数値が高いほど、少ない資産で多くの売上をあげている、つまり資産を効率よく使えていることになります。一般的には1.0より大きいことが望ましいとされますが、業種によってはそれより小さいのが当たり前ということもあります。
先ほどのROEと少し似て感じるかもしれません。違いは注目する数字にあります。ROEは「利益」に、総資産回転率は「売上高」に注目します。利益に注目するROE、売上に注目する回転率と対で覚えておきましょう。
試験でのポイント: 「売上高 ÷ 総資産」で資産の使いこなし効率を測る。
過去問に挑戦
それでは、実際の過去問を1問解いてみましょう。どの指標がどの表から計算できるかを意識すると、迷わず選べるはずです。
腕試し問題
出典:ITパスポート試験 令和6年度 問30
上司から自社の当期の損益計算書を渡され、“我が社の収益性分析をしなさい”と言われた。経営に関する指標のうち、この損益計算書だけから計算できるものだけを全て挙げたものはどれか。 a売上高増加率b売上高利益率c自己資本利益率
解答と解説
正解はエです。
正答の理由
計算に必要な数字が損益計算書だけでそろうのは、bの売上高利益率です。売上高利益率は「利益 ÷ 売上高」で求められ、利益も売上高もどちらも損益計算書に載っています。よって、正しく選んでいるのはエだけです。
誤答の解説
- ❌ ア「a」→ aの売上高増加率は前期との比較が必要で、当期の損益計算書1枚では計算できません
- ❌ イ「a, b」→ bは計算できますが、aが計算できないため誤りです
- ❌ ウ「a, b, c」→ cの自己資本利益率(ROE)は「利益 ÷ 自己資本」で、自己資本は貸借対照表にしか載っていません
ポイント
- 損益計算書だけで計算できるのは、利益と売上高だけで完結する指標
- 売上高増加率は前期の数字が要る(表1枚では足りない)
- 自己資本利益率(ROE)は自己資本が要るので、貸借対照表がないと計算できない
まとめ
| キーワード | 一行まとめ |
|---|---|
| 貸借対照表 | ある時点の財産の状態を表す。左右が必ず釣り合う(B/S) |
| 損益計算書 | 一定期間の収益と費用から経営成績を表す(P/L) |
| キャッシュフロー計算書 | 現金の出入りを記録し、支払い余力を確認する |
| ROI | 個別の投資に対する稼ぎの効率(投資利益率) |
| ROE | 会社全体の元手に対する稼ぎの効率(株主資本利益率) |
| 流動比率 | 流動資産 ÷ 流動負債 × 100。短期の支払い能力 |
| 総資産回転率 | 売上高 ÷ 総資産。資産を使いこなす効率 |
出題数の多いテーマではありませんが、「時点か期間か」「利益か売上か」といった対比で整理すれば、それほど難しくありません。まずは財務三表の役割の違いを固めてから、指標を1つずつ確認してみてください。実際の問題で数値の穴埋めに慣れておくと、本番で落ち着いて計算できるようになります。


