なぜ1日の遅れが全体に響く?クリティカルパスとアローダイアグラム【ITパスポート】

10日で終わるはずだった作業が、1日遅れました。プロジェクト全体も1日遅れるのでしょうか。答えは「その作業がどこにあるか次第」です。遅れがそのまま全体に響く作業と、多少遅れても吸収できる作業があります。この違いを見分けるための考え方が、クリティカルパスです。
アローダイアグラムとは
クリティカルパスの話に入る前に、それを見つけるための図を押さえておきましょう。
作業の関連をネットワークで表した図である。
(出典:ITパスポート試験 令和元年秋期 問42)
簡単にいうと、作業を矢印で、作業の区切りを丸で表した図です。矢印には作業名と所要日数を書きます。丸から丸へ矢印をたどっていくと、どの作業がどの作業の後でないと始められないかが一目でわかります。
シラバス上は、マネジメント系の「プロジェクトマネジメント」に含まれます。PERTなどのスケジュール分析で使われるネットワーク図の一種です。
この手法、生まれは軍事プロジェクトです。1958年、アメリカ海軍がポラリスミサイルの開発計画のために考案しました(参考: 米海軍特別プロジェクト局「PERT Summary Report」1958年)。多数の組織が関わる計画を、期日に間に合わせるために作られた道具というわけです。
クリティカルパスの見つけ方
クリティカルパスとは、開始から完了までの経路のうち、いちばん時間がかかる経路のことです。見つけ方は単純で、すべての経路の所要日数を出して、いちばん長いものを選ぶだけです。
たとえば、次のような計画があったとします。
- 作業A(3日)のあとに、作業B(4日)と作業C(2日)が並行して始められる
- 作業Bのあとに作業D(5日)、作業Cのあとに作業E(3日)
- DとEの両方が終わったらプロジェクト完了
経路は2本あります。
| 経路 | 計算 | 所要日数 |
|---|---|---|
| A → B → D | 3 + 4 + 5 | 12日 |
| A → C → E | 3 + 2 + 3 | 8日 |
長いほうの A → B → D が クリティカルパスで、プロジェクト全体は12日かかります。

冒頭の問いに戻りましょう。作業Bが1日遅れると、全体は13日になります。クリティカルパス上にあるからです。いっぽう作業Cが1日遅れても、全体は12日のままです。こちらの経路には4日の余裕があるためです。
この余裕をフロート(余裕時間)と呼びます。このような単純な日程計画では、クリティカルパス上の作業のフロートはゼロになります。ここが試験で問われる中心です。
ガントチャートとの違い
もう一つの代表的なスケジュール図がガントチャートです。混同しやすいので、違いを押さえておきましょう。
| 観点 | アローダイアグラム | ガントチャート |
|---|---|---|
| 表し方 | 作業を矢印、区切りを丸でつないだネットワーク | 作業を縦軸、期間を横棒で表した図 |
| 得意なこと | 作業どうしの前後関係がわかる | いつ何をやるかが一目でわかる |
| クリティカルパス | 見つけられる | 単純な横棒だけでは読み取れない |
| 進捗の把握 | しにくい | しやすい |

見分け方は「線でつないでいるか、棒を並べているか」です。前後関係を線でつないでいればアローダイアグラム、期間を横棒で並べていればガントチャートになります。実務のツールには依存関係からクリティカルパスを表示できるものもありますが、試験で問われるのは単純な横棒の図です。
実際、アローダイアグラムの説明を問う過去問では、ガントチャートの説明が誤答の選択肢として並びます。「作業を縦軸にとって、作業の所要期間を横棒で表した図」と書かれていたら、それはガントチャートです。
試験ではこう出る
よく出るのは次の2つです。用語と図を結びつけられるかを問う形と、アローダイアグラムから所要日数や遅れの影響、余裕時間を計算させる形です。令和5年・令和6年は後者、令和7年は知識を問う形でした。まずは用語を問う基本形からどうぞ。
腕試し問題
出典:ITパスポート試験 平成24年秋期 問49
プロジェクトの開始から完了まで最も所要時間が掛かるクリティカルパスを見つけるのに使う図として、適切なものはどれか。
解答と解説
解説(解答せずに開けます)
正解はアです。
正答の理由
クリティカルパスは経路の長さを比べて求めるものなので、作業のつながりが線で表されている図でなければ見つけられません。それがアローダイアグラムです。
誤答の解説
- ❌ イ「パレート図」→ 項目を件数の多い順に並べて累積比率を見る図。優先順位づけに使う
- ❌ ウ「ヒストグラム」→ 数値データを一定の範囲ごとに分け、度数を柱で表す図
- ❌ エ「マイルストーンチャート」→ 節目となる時点を並べた図。作業のつながりは表さない
ポイント
- この4つの選択肢の中で、経路を比べられるのはアローダイアグラムだけ
- パレート図・ヒストグラムは品質管理の図で、スケジュールの図ではない
もう1問、最近の出題も見ておきましょう。
腕試し問題
出典:ITパスポート試験 令和7年度 問41
システム開発プロジェクトで使用される技法のうち、スケジュール作成に用いる技法として、適切なものだけを全て挙げたものはどれか。 a DFD(Data Flow Diagram) b回帰分析 cクリティカルパス法 dプレシデンスダイアグラム法
解答と解説
解説(解答せずに開けます)
正解はエです。
正答の理由
クリティカルパス法とプレシデンスダイアグラム法は、どちらも作業の前後関係からスケジュールを組み立てる技法です。プレシデンスダイアグラム法は、作業をノード(箱など)で表し、前後関係を矢印で結ぶ書き方です。アローダイアグラムでは矢印が作業、プレシデンスダイアグラム法ではノードが作業という違いがあります。
誤答の解説
- ❌ a「DFD」→ データの流れを表す図。スケジュールとは無関係
- ❌ b「回帰分析」→ データから傾向を読む統計手法
ポイント
- 「スケジュール作成の技法か」で仕分ける。図の名前だけで判断しない
- プレシデンスダイアグラム法は近年の出題で登場する。アローダイアグラムは矢印が作業、こちらはノードが作業
まとめ
- アローダイアグラムは、作業の関連をネットワークで表した図
- クリティカルパスは、開始から完了までで最も時間がかかる経路
- 見つけ方は「すべての経路の所要日数を出して、いちばん長いものを選ぶ」
- ほかの作業のやり方を変えなければ、クリティカルパス上の作業の遅れはそのまま全体の遅れになる
- 単純なガントチャートからは、クリティカルパスは読み取れない
経路を全部書き出して足すだけなので、落ち着いて数えれば確実に取れます。まずは「線でつないでいるか、棒を並べているか」から見分けてみてください。
この用語が出てくる回
クリティカルパスは、業務分析の手法とセットで出題されます。関連するキーワードをまとめて確認したいときは、次の記事も参考にしてください。
動画で学ぶ
アローダイアグラムとクリティカルパスは、YouTubeでも解説しています。音声と図解で学びたいときは、こちらもご覧ください。
- ITパスポート試験対策 part1-3 業務分析・データ利活用①(通常版): https://youtu.be/YV-fWnqlq4c
- ITパスポート試験対策 part1-3 業務分析・データ利活用①(ゆっくり版): https://youtu.be/ZdQmpz4w9m8
この記事のタグ
- マネジメント系
- プロジェクトマネジメント
- クリティカルパス
- アローダイアグラム
- ガントチャート


