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インシデント管理とは——サービスの回復か、原因の究明か【ITパスポート】

シカラボ編集部
インシデント管理とは——サービスの回復か、原因の究明か【ITパスポート】

「メールが送れません」と連絡が入りました。さて、どちらを先にやるでしょうか。原因を突き止めるか、とにかく使える状態に戻すか。どちらも必要な仕事ですが、担当するプロセスが別に分かれています。前者が問題管理、後者がインシデント管理です。ITパスポート試験では、この線引きが繰り返し問われます。

インシデント管理とは

インシデント管理とは、中断しているサービスをできるだけ早く回復させる活動のことです。

サービスの中断時間を最小限に抑えて速やかに回復し、サービスの品質を維持する。

(出典:ITパスポート試験 平成21年春期 問40)

注目したいのは、「原因を取り除く」とは書いていないところです。優先するのは中断時間を短くすること。根本原因を突き止めて再発を防ぐことは、ここでの目的ではありません。復旧のために原因の見当をつけることはありますが、狙っている先が違います。

このことは、対応のしかたにも表れます。

システム利用者の業務の継続を優先し、既知の回避策があれば、まずそれを伝える。

(出典:ITパスポート試験 平成21年秋期 問31)

回避策で構わない、というのがインシデント管理の考え方です。根本から直っていなくても、利用者が仕事を続けられるならそれでよい。シラバス上はマネジメント系の「サービスマネジメント」に含まれます。

もうひとつ、インシデントは完全に止まった状態だけを指すわけではありません。JIS Q 20000-1:2020 は、インシデントをこう定義しています。「サービスに対する計画外の中断、サービスの品質の低下、又は顧客若しくは利用者へのサービスにまだ影響していない事象」です。遅い・つながりにくいも入る、と押さえておきましょう。

具体例でイメージをつかむ

たとえば、ネットワーク障害でメールが送れなくなったとします。

やったことどちらの仕事か
電話で内容を伝えて、業務を止めずに済ませたインシデント管理
バックアップシステムを立ち上げてサービスを再開したインシデント管理
原因を究明するため、担当者とベンダの技術者を招集した問題管理
障害再発防止に向けて、アプリケーションの不具合箇所を突き止めた問題管理
サービスの回復を急ぐインシデント管理と、原因究明と再発防止を担う問題管理の役割分担を示した図

上の2つは、どれもいま困っている人を助ける動きです。さきほど見た目的(迅速に回復する)と対応のしかた(既知の回避策を伝える)そのものです。下の2つは、次に同じことが起きないようにする動きです。こちらは平成22年秋期の問33と平成29年秋期の問47が、どちらも問題管理の事例として正解にしています。

見分けるコツは、その行動が「いま」を向いているか「次」を向いているかです。復旧・回避・代替手段は「いま」、原因究明・再発防止は「次」。ただしこれは覚えるための目安で、設問では既知の回避策でサービスを回復する活動か、根本原因や恒久的な解決策を調べる活動かを読み取ります。両者が連携して進むこともあります。

なお、令和4年の問49では、利用者からの問合せに自動応答するチャットボットの導入が、インシデント管理の自動化として問われました。問合せを受ける単一の窓口(サービスデスク)を置くのはインシデント管理の担当だからです(平成31年春期の問36)。インシデント管理はプロセス、サービスデスクはそれを担う窓口で、後で触れるサービス要求も受け付けます。問合せの受付と既知の回避策の案内は、自動応答に向いています。

問題管理・変更管理・構成管理との違い

サービスマネジメントには似た名前のプロセスが並びます。令和4年の問44の選択肢が、ちょうど4つを並べていました。表で整理しておきましょう。

プロセス何をするか
インシデント管理中断しているサービスを可能な限り迅速に回復する
問題管理原因を分析し、根本的な原因を解決して再発を防止する
変更管理サービスに対する全ての変更を一元的に管理し、変更に伴うリスクを低減する
構成管理機器やソフトウェアに関する情報を最新・正確に維持管理する
インシデント管理は「いま使える状態に戻す」、問題管理は「次を防ぐ」、変更管理は「変更のリスクを減らす」、構成管理は「記録し続ける」と、動詞で覚える図

覚え方は「いま使える状態に戻すインシデント、次を防ぐ問題、変更のリスクを減らす変更、記録し続ける構成」です。4つとも「管理」で終わるので、動詞のほうで覚えると混ざりません。

シラバスにはもうひとつ、サービス要求管理も並んでいます。JIS Q 20000-1:2020 でいうサービス要求は「情報,助言,サービスへのアクセス,又は事前に承認されている変更に対する要求」です。パスワードの初期化や消耗品の交換のような、障害ではない依頼はこちらに入ります。

試験ではこう出る

よく出るのは次の2つです。適切な記述を選ばせる形と、場面を示して、その場で何をするかを選ばせる形です。

腕試し問題

出典:ITパスポート試験 平成24年春期 問39

インシデント管理に関する記述のうち、適切なものはどれか。

解答と解説

解説(解答せずに開けます)

正解はウです。

原因追究より回復を優先する。ここまで見てきた考え方そのものです。

  • ❌ ア「問題管理へ引き継ぐ」→ SLA(Service Level Agreement)は、サービス内容に関する合意書です。SLAで定めた時間内に解決できないという理由だけで、問題管理へ引き継ぐわけではありません。必要に応じて専門技術をもつ二次サポートにエスカレーションし、復旧対応を続けます(令和3年の問44)。根本原因の調査は、問題管理と連携して進めます
  • ❌ イ「再発防止のための対策を実施する」→ 問題管理です
  • ❌ エ「記録する必要はない」→ 解決方法が分かっていても、記録は必要です

もう1問、場面から考える形も解いてみましょう。

腕試し問題

出典:ITパスポート試験 平成23年特別 問35

業務で使用するPCにおいてプログラムに不具合があり、PCが操作不能になる現象がサービスデスクに報告された。ITサービスマネジメントにおけるインシデント管理で実施する作業として、適切なものはどれか。

解答と解説

解説(解答せずに開けます)

正解はアです。

PCが操作不能になっていて、利用者は仕事の手が止まっています。まず戻したいのは使える状態です。再起動の手順を伝えれば、その場で業務に復帰できます。不具合そのものは残ったままですが、それでかまいません。

  • ❌ イ「修正したプログラムをPCに配布する計画を立てる」→ 修正版を配る計画は恒久的な対応の側で、目の前の中断は続きます
  • ❌ ウ「修正したプログラムをテストする」→ 修正版の確認は恒久的な解決策の側の作業で、いま業務を回復させる動きではありません
  • ❌ エ「プログラムの不具合を修正する」→ 原因そのものを取り除く、恒久的な解決策の側の動きです。修正が済むまで、利用者の手は止まったままです

イ・ウ・エも必要な作業です。修正やテストが、インシデント管理から必ず外れるわけでもありません。ただ、この場面のイ・ウ・エは不具合を直して届ける作業で、インシデントがアで片付いたあとも、インシデント管理とは別のプロセスで進みます。同じ障害でも、何のための作業かでプロセスが変わるところが、この型の勘どころになります。

まとめ

  • インシデント管理は、中断しているサービスをできるだけ早く回復させる活動
  • 原因を取り除くことは目的ではない。既知の回避策があれば、まずそれを伝えてよい
  • 問題管理は原因を分析し、再発を防止する活動。向いている先が違う
  • 見分けるコツは「いまを向いているか、次を向いているか」
  • 変更管理は変更に伴うリスクの低減、構成管理は情報の維持管理。名前は似ているが仕事は別
  • 障害ではない依頼(パスワード初期化・消耗品の交換)はサービス要求管理の側

事例問題は、行動そのものより何のためにやったかを読むと迷いません。「早く使えるようにするため」ならインシデント管理だと考えてみてください。

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