なぜWBSを作るのか|成果物と作業を洗い出し、見積りの根拠にする【ITパスポート】

「引っ越しの準備、だいたい3日あれば終わるよね」。こう言って、当日に荷造りが終わっていなかった経験はないでしょうか。やることを書き出す前に日数を見積もったのが原因です。仕事でも同じことが起きます。だから先に、作るものとやることを全部並べる。そのための道具がWBSです。
WBSとは
WBS(Work Breakdown Structure)とは、プロジェクトの成果物と、それを作るための作業を階層に分けて明確にしたものです。作成する目的は、過去問がはっきり書いています。
成果物とそれを作成するための作業を明確にする。
(出典:ITパスポート試験 平成23年特別 問45)
「Breakdown」は分解のことです。大きなかたまりのままでは扱えないので、扱える大きさになるまで割っていきます。シラバス上はマネジメント系の「プロジェクトマネジメント」に含まれるキーワードです。
では、どこまで細かく割ればよいのでしょうか。この目安も出題されています。
要素分解の最下位の詳細さは、コスト見積りとスケジュール作成を行えるレベルである。
(出典:ITパスポート試験 平成22年秋期 問52)
見積りと日程が立てられるところまで、が答えです。それ以上細かくする必要はありませんし、それより粗いと見積もれません。この基準は覚えておきましょう。
具体例でイメージをつかむ
社内向けの問合せサイトを作るプロジェクトで考えてみましょう。いきなり「3か月」と言う前に、こう分けます。
| 第1階層(成果物) | 第2階層(作業) |
|---|---|
| 要件定義書 | 業務のヒアリング、要件の整理、レビュー |
| 設計書 | 画面設計、データベース設計、レビュー |
| プログラム | 実装、単体テスト |
| テスト報告書 | 結合テスト、報告書の作成 |

ここまで分かれると、「画面設計は3人日」というように作業ごとに工数を見積もれます。足し上げれば全体の工数になります。WBSが工数見積りの根拠になる、という点は試験でも問われます。
ただし、工数がわかっても日程はまだ決まりません。作業の順序、それぞれの所要期間、同時に進められるかどうか、担当できる人数——こうした情報を足して、はじめて日程が引けます。WBSはその手前までを受け持ちます。
分けるときに気をつけたいのがスコープです。スコープとはプロジェクトでやると決めた範囲のことで、WBSに書くのはその範囲の中身だけになります。範囲外の作業は入れません。反対に、範囲の中にある作業は、似たものであっても省けません。
もうひとつ、全部を同じ深さまで割る必要はありません。先ほど引用した平成22年秋期の問52では、「要素分解の深さは、すべての要素成果物に対して同じにする」が誤答になっています。見積もれる粒度に達したところで止めてよい、ということです。
WBS辞書・クリティカルパスとの関係
WBSの周辺には、役割の違う道具が並びます。混ざりやすいので整理しておきましょう。
| 何をするものか | |
|---|---|
| WBS | 成果物と作業を階層に分けて洗い出す |
| WBS辞書(補助文書) | WBSで定義した作業の内容と意味を明確に定義する |
| クリティカルパス | 作業の依存関係から、全体の所要日数を決める経路を求める |
| ガントチャート | 作業の予定と実績を時間軸に沿って表す |

覚え方は「WBSは並べる道具、日程はその次」です。WBSそのものは順番や期間を決めません。洗い出した作業に順序と所要日数をつけて初めて、クリティカルパスが求まります。令和3年の問54でも、WBS辞書の目的として「クリティカルパスを求める」が誤答になっています。
試験ではこう出る
試験では、WBSの目的や性質に加えて、ほかの図表との役割の違いも問われます。まずは性質からどうぞ。
腕試し問題
出典:ITパスポート試験 令和4年度 問36
プロジェクトで作成するWBSに関する記述のうち、適切なものはどれか。
解答と解説
解説(解答せずに開けます)
正解はアです。
WBSで作業内容と成果物を定義するからこそ、工数見積りの根拠として使えます。
- ❌ イ「スコープ外の作業も検討して含める」→ WBSに書くのはスコープの中身だけです
- ❌ ウ「全てのプロジェクトにおいて、同じ階層まで詳細化する」→ 深さをそろえる決まりはありません
- ❌ エ「類似作業は記載しなくてよい」→ スコープ内なら省けません
もう1問、ほかの図表との切り分けです。WBSがどこまでを受け持つのかを解いてみましょう。
腕試し問題
出典:ITパスポート試験 平成29年春期 問48
プロジェクトで実施する作業の順序設定に関して、次の記述中のa、bに入れる字句の適切な組合せはどれか。 成果物を作成するための作業を、管理しやすい単位に[a]によって要素分解し、それらの順序関係を[b]によって表示する。
解答と解説
解説(解答せずに開けます)
正解はアです。作業を管理しやすい単位に要素分解するのがWBS、その順序関係を矢印でつないで表すのがアローダイアグラムです。
- ❌ イ「b=パレート図」→ パレート図は件数の多い順に棒を並べる図で、作業の順序は表しません
- ❌ ウ「a=ガントチャート」→ ガントチャートは時間軸に予定と実績を示す図で、要素分解には使いません
- ❌ エ「a=ガントチャート、b=パレート図」→ 分解にも順序設定にも当てはまりません
順序をつないだ先に、いちばん日数のかかる経路としてクリティカルパスが見えてきます。分解して、順序をつけて、日程を引く——この並びで覚えておきましょう。
まとめ
- WBSは、成果物とそれを作成するための作業を明確にするために作る
- 分解の目安は「コスト見積りとスケジュール作成を行えるレベル」まで
- 書くのはスコープの中身だけ。範囲外は入れず、範囲内は似ていても省かない
- 深さをそろえる決まりはない。見積もれるところで止めてよい
- WBS辞書は作業の内容と意味を定義する補助文書。日程を決める道具ではない
「やることを並べてから見積もる」という順番さえ体に入れば、この分野の問題は迷いません。選択肢に「スコープ外」「同じ階層まで」が出てきたら、まず疑ってみてください。
この記事のタグ
- マネジメント系
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