なぜSLAを結ぶのか|サービスの範囲と品質を先に決めておく理由【ITパスポート】

「できるだけ早く復旧します」——委託先からそう言われて、安心できるでしょうか。「早く」が何分なのか、何時から何時まで見てくれるのか。決めていないと、あとになって「そんなつもりではなかった」が起きます。この食い違いを先に潰しておくための取り決めがSLAです。ITパスポート試験では、平成21年春期から令和7年までの28回で、繰り返し出題されています。
SLAとは
SLAとは、サービスの内容について、提供する側と顧客があらかじめ合意しておく取り決めです。
サービス内容に関して、サービスの提供者と顧客間で合意した事項
(出典:ITパスポート試験 平成23年特別 問47)
もう少し詳しく書いた問題もあります。
SLAとはサービス提供者とサービス利用者との間で取り決めたサービスレベルの合意書であり、SLMとはITサービスの品質を維持し、向上させるための活動である。
(出典:ITパスポート試験 平成24年秋期 問39)
SLAは Service Level Agreement の略で、日本語ではサービスレベル合意書と呼ばれます。簡単にいうと、「どこまでを、どのくらいの品質で提供するか」を文書にして握っておくものということです。
目的も過去問にあります。平成21年春期の問46は、SLAの目的として「サービスの範囲と品質を明確にする。」を正解にしました。利点が問われた年もあります。平成26年春期の問48の正解は「サービスの内容、提供範囲、要求水準に関する共通認識をもつことができる。」でした。認識をそろえられるのが利点だと押さえておきましょう。
結ぶ相手は顧客の側です。平成27年秋期の問41は、SLAの内容を合意する相手を「ITサービスを利用する組織の責任者」としています。シラバス上はマネジメント系の「サービスマネジメント」に含まれます。
具体例でイメージをつかむ
たとえば、社内システムの運用を外部に任せるとします。「安定して動かしてください」と伝えるだけでは、守れたかどうかを後から確かめられません。令和4年の問51は、この考え方を「期待するサービスの目標値を定量化して合意した上でSLAに明記し」と書いています。
書く項目も過去問が示しています。平成21年秋期の問35は、SLAに含める項目として「サービス提供時間帯」を正解にしました。平成24年春期の問30では、委託者を甲として「検知した異常の内容を60分以内に甲に報告するものとする」と書いた選択肢が正解でした。
項目は種類で分けて考えます。平成23年秋期の問46は「SLAのサービスレベルの項目は、可用性、信頼性、性能などに分けられる」と述べています。可用性に分類されるものとして「サービス時間」を正解にしました。使える時間は可用性、と結びつけておきましょう。
数字の意味がよくわかるのが令和6年の問38です。月曜から金曜、1日7時から22時、稼働率98%以上と合意したとき、1週間で止まってよい時間を問いました。答えは1.5時間です。1日15時間×5日で週75時間、その2%にあたります。98%はほとんど止まらない印象ですが、実際は週に最大1時間半まで許容範囲になります。

決めた数字は、日々の運用を測る物差しにもなります。平成25年秋期の問44は、サービスデスクの評価指標として「SLAで定められた目標対応時間内に対応が完了したインシデントの割合」を適切なものに含めました。インシデント管理の良し悪しも、SLAの数字で見るわけです。
SLMとの違い
SLAと1文字違いのSLMは、選択肢に並べて出されます。SLMはサービスレベル管理のことです。SLAはサービス水準についての合意書、SLMはその達成状況を管理して改善する活動、と押さえましょう。
| 観点 | SLA | SLM |
|---|---|---|
| 正体 | サービスレベルの合意書 | 品質を維持し、向上させる活動 |
| 中身 | 範囲と品質を明確にし、目標値を定量化して明記する | 提供状況をモニタリングし、レビューして達成状況を確認する |

平成28年春期の問41は、SLMをこう説明しています。「SLAの合意内容を達成するために、サービス状況のモニタリングやレビューなどを通じてサービスレベルの維持や向上を図る活動」です。令和3年の問53の正解も、SLMが「サービスの提供状況のモニタリングやレビューを行う」ことを挙げていました。
回し続けるもの、というのも押さえどころです。令和元年秋期の問48は、サービスレベル管理のPDCAサイクルを出題しました。C(Check)にあたるのは「提供したサービスを監視・測定し、サービス報告書を作成する」ことです。
なお、同じ令和3年の問53には「SLAで合意するサービスレベルを容易に達成できるレベルにしておくことが重要である」という記述も並びます。こちらは適切でないもの、つまり誤答です。
覚え方は「Aは合意書、Mは管理」です。並んで出てきたら、合意そのものか、その後の管理かで振り分けてみてください。
試験ではこう出る
よく出るのは次の2つです。SLAとSLMを見分ける形と、何をSLAで合意するかを判断させる形です。まずは見分けから解いてみましょう。
腕試し問題
出典:ITパスポート試験 令和7年度 問37
ITサービスマネジメントに関して、次の記述中のa、bに入れる字句の適切な組合せはどれか。 [a]はサービス提供者と顧客との間で合意されたサービス品質に関する合意書である。[a]の遵守状況を確認し、ITサービスの品質を維持・改善させるための活動が[b]である。
解答と解説
解説(解答せずに開けます)
正解はエです。
合意書がSLA、その遵守状況を確認して品質を維持・改善する活動がSLMです。
- ❌ ア「a=NDA、b=SCM」→ 合意書の名前も活動の名前も違います。NDAはNon Disclosure Agreement、SCMはSupply Chain Managementの略です
- ❌ イ「a=NDA、b=SLM」→ bは合っていますが、aが違います
- ❌ ウ「a=SLA、b=SCM」→ aは合っていますが、bが違います
もう1問、合意する内容を選ぶ形も見てみましょう。
腕試し問題
出典:ITパスポート試験 平成30年春期 問38
オンラインモールを運営するITサービス提供者が、ショップのオーナとSLAで合意する内容として、適切なものはどれか。
解答と解説
解説(解答せずに開けます)
正解はイです。計画停止を休日夜間に行うという取り決めは、ショップが店を開けられる時間に直結します。提供するサービスの水準そのものなので、SLAで合意する内容にあたります。
- ❌ ア「ソフトウェア開発の外部委託及びその納期」→ この問題でショップオーナーに約束するオンラインサービスの水準ではありません
- ❌ ウ「利用者への新しい決済サービスの公表」→ 提供する水準を決める記述ではありません
- ❌ エ「PDCAサイクルを通してプロセスを改善すること」→ 改善を続けるのはSLMの側の話です
まとめ
- SLAは、サービス内容に関して提供者と顧客が合意した事項を記した合意書
- 目的はサービスの範囲と品質を明確にすること。共通認識をもてるのが利点
- 合意する相手は顧客の側。過去問の正解はITサービスを利用する組織の責任者
- 書くのはサービス提供時間帯のように、後から確かめられる項目
- 稼働率98%以上でも、週75時間の運用なら1.5時間まで止まってよい計算になる
- SLMは、モニタリングやレビューで達成状況を確認し、品質の維持・向上を図る活動
あいまいな約束では、守れたかどうかを確かめにくくなります。SLAの問題では、その記述が顧客に約束する水準か、後から確かめられる形かを見てみてください。合意書のSLAと、回し続ける活動のSLMを分けておくと迷いません。
この記事のタグ
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